老化による身体への症状と影響(原因)1


加齢による血液・免疫系への影響

発熱といっても、それほどでもないから心配ない?

加齢によって基礎体温は低下し、同時に、外因性・内因性の発熱物質に対しての視床下部体温中枢の反応も低下してきます。
このため、高齢者は感染症を引き起こしても発熱しないことがあります。実際に、命にかかわるような重症感染症で救急外来を受診した高齢者の20~30%は発熱をきたしていなかったといわれています。高齢者では重症感染症の症状がADL(日常生活動作)低下やせん妄など漠然としたものであることが多く、発熱だけを手がかりにしていると見落とす危険性があります。

*高齢者は、感染症でも発熱しないことがある
貧血は年齢の影響?

確かに加齢とともにヘモグロビンの値は下がる傾向がありますが、年齢によって基準値を変えるほど下がるわけではありません。
高齢者の血液検査で貧血をきたしているのに、「年のせいじゃないの・・・」と安易に考えてしまうことがありますが、高齢者の貧血の背景には、胃がん、大腸がん(体重減少+貧血)や多発性骨髄腫(腰痛+貧血の組み合わせでは必ず疑う)など悪性腫瘍が潜んでいることが多くあります。貧血を見たら悪性腫瘍を考え、黒色便、体重減少、食欲不振、腰痛など随伴症状を確認する習慣をつけましょう。

*高齢者の貧血を年のせいにしない。背後に悪性腫瘍の影あり
*随伴症状(腰痛や食欲不振など)チェックしましょう

加齢による消化器系への影響

食欲がないのは年のせい?

加齢とともに食が細くなることがありますが、背後に悪性腫瘍、抑うつ、薬剤の副作用・相互作用などが隠れていることも少なくありません。
あまり認識されてませんが、高齢者が内服する多くの薬剤は食欲低下をきたす可能性があります。訴えが多い高齢者には処方される薬の数が増えてしまいがちですが、「この症状は薬剤の副作用ではないか」を疑い内服薬剤の内容を検討することは非常に重要です。

*高齢者の食欲不振は、悪性腫瘍、抑うつ、薬の副作用をチェックする



便秘は年のせい?

加齢により腸管運動は低下し、高齢者は便秘傾向になります。高齢者の便秘が「年のせいだから」と長期間放置されると宿便性イレウス(宿便性腸閉塞)をきたすことがあり、腹痛や腹部膨満(おなかのハリ)がひどい場合は下痢の処方などが必要になります。また、大腸がん(特に直腸がんや左半結腸がん)では便秘が初発症状(起こりはじめ)のことがあるため、しつこい便秘では、一度は悪性腫瘍の検索が必要です。
三環系坑うつ薬など坑コリン作用の強い薬剤が腸管運動低下を増悪させている場合もあるので、薬剤内服歴の聴取が大切です。

*高齢者の便秘の背後に悪性腫瘍の影あり

加齢による呼吸器系への影響

高齢者だから肺炎になっても仕方がない?

「肺炎は老人の友である」という言葉があるくらい、昔から肺炎は高齢者の死亡原因の上位を占めるものでした。なぜ加齢の共に肺炎が増加するかといえば、線毛細胞の機能低下や嚥下反射・咳反射低下による不顕性誤嚥(気づかないうちに誤嚥している)が増えるからです。特に脳卒中や胃食道逆流症の既往がある高齢者は誤嚥性肺炎のリスクが高くなります。
高齢者の肺炎は若年者に比べて治療に難渋することが多く、死亡率も高いため、口腔ケアやワクチン接種(インフルエンザワクチンや肺炎球菌ワクチン)などの予防が重要になってきます。

*高齢者の肺炎では誤嚥性肺炎を考慮する
*口腔ケア、ワクチン接種など予防が大切

加齢による胃・泌尿器系への影響

血清クレアチニン値は正常だから、胃機能は問題ないのでは?

加齢と共に糸球体濾過値(GFR)は低下します。しかし同時に筋肉量も低下してくるため、GFRの低下が血清クレアチニン値に反映されません。そのため、血清クレアチニン値のみで腎機能を推定してしまうと、造影剤や種々の薬剤の使用量が過剰になり、思わぬ副作用を生じる危険があります。
最近はeGFRといって年齢、性別、血清クレアチニン値からGFRを推定する計算式が開発され、血液検査をすると自動的に報告される施設も増えてきました。高齢者の腎機能は血清クレアチニン値で評価するのではなくeGFRで評価するようにしましょう。

*高齢者は腎機能低下があっても、血清クレアチニン値が上昇しない
*腎機能はeGFRで評価しよう



高齢者だから尿路感染症になるのは仕方ない?

加齢とともに、前立腺肥大症や脳梗塞後遺症による神経因性膀胱でおこる尿失禁・尿閉など排尿障害の頻度が増加します。
これらの変化は尿流障害をきたし、尿路感染症や腎後性腎不全の原因となります。「ただの尿路感染症でしょう」と安易に考えて、抗菌薬投与による尿路感染症治療だけで終了してしまうと、再発のリスクが高く、背後に重篤疾患が潜んでいても発見が遅れてしまいます。男性の尿路感染症や高齢女性の繰り返す尿路感染症では、治療後に尿路の形態的・機能的評価をすすめるげきです。

*高齢者が尿路感染症を繰り返す場合は、背後に尿流異常を検索しましょう
側背部が痛いって、それは尿路結石じゃない?

若年者は尿濃縮力機能が保たれているため、夜間就寝中はあまりトイレに起きません。しかし、尿が濃縮されるため深夜から早朝にかけて尿路結石による疼痛発作が起こりやすくなります。
一方、高齢者は加齢とともに尿濃縮力が低下するために夜間も多尿になります。尿が濃縮されないので尿路結石による疼痛発作がおこることは非常にまれです。高齢者で「尿路結石かな?」と思った場合は腹部大動脈瘤や腎梗塞など血管疾患を最初に鑑別するべきです。

*高齢者の尿路結石は非常に珍しい
*「尿路結石かな?」と思ったら、腹部大動脈瘤を心配しましょう

→ 老化による身体への症状と影響(原因)2

引用文献
参考文献
著書 JJNスペシャル NO.88 医学書院 岩田充永
急変予防&対応ガイドマップ 高齢者救急

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