老化による身体への症状と影響(原因)2


加齢による神経系への影響

急にぼけたって、それは認知症じゃないの?

加齢によって、神経細胞数の減少や軸索変性など神経細胞の変化は起こりますが、それだけでは認知機能障害や行動障害をきたすことはありません。
認知症の原因には、アルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症、脳血管障害などの疾患がありますが、これらの発症と進行は月単位~年単位と非常にゆっくりであるのが特徴です(年齢が若い人は進行が早いですが、人それぞれです)。したがって、「高齢者がぼけた」といって救急外来を受診する場合は、数時間~日単位の急速な発症である場合がほとんどであり、認知症ではなく、急病によるせん妄や慢性硬膜下血腫などの疾患を考慮する必要があります。

*高齢者が急にぼけたら認知症ではなく急病によるせん妄や慢性硬膜下血腫を疑う

それほど痛がっていないから重症ではない?

加齢に伴い自律神経系の機能が低下してきます。
このため、体に緊急事態が発生してもカテコラミンの放出やカテコラミンに対する感受性が低下したり、疼痛闘値の上昇(痛みを感じにくくなる)が起こります。このため、心筋梗塞や急性腹症(消化管穿孔、虫垂炎穿孔等)などが生じても若年者に比べて痛みの訴えが軽くなってしまい、診断が遅れることがあります。

*高齢者は重篤疾患でも痛がらない!痛みが軽いからといって油断しないこと



加齢による循環器系への影響

血圧が高いので、大急ぎで下げなきゃ?

加齢とともに収縮期血圧が上昇する傾向があります。
これは、加齢とともに末梢血管抵抗が増大するためです。高血圧症治療ガイドラインでは、収縮期高血圧の高齢者においても、長期的には若年者と同様の目標値(140/90mmHg程度)にコントロールすることが推奨されていますが、普段、高血圧であった高齢者が急激な降圧をはかると臓器血流不全をきたす危険性があります。
「血圧を測ったら高かったので心配だ」という理由で病院を受診する高齢者も多くいますが、高血圧による臓器障害がない無症候性の高血圧では緊急の降圧は避けるべきです。急性肺水腫などで緊急に降圧が必要な場合も、尿量などを確認しつつ慎重に降圧を行う配慮が必要です。

*高齢者の急激な降圧は、急性腎障害をきたすリスクがあります

心駆出率(EF)が保たれているので心不全ではない?

呼吸困難や全身の浮腫など心不全を疑う症例では、心エコー検査が行われます。心エコー検査で測定される心駆出率(EF)が低値で、収縮機能が低下している場合(収縮障害型心不全)は心不全の診断に苦慮することはないのですが、心エコーで(EF)が正常だからといって心不全を否定できないことを理解しておきましょう。
左室収縮能は加齢によって変化しませんが、心筋コンプライアンス(心臓の筋肉のしなやかさをイメージしてください)は低下するため、左室の拡張能(拡がりやすさ)は低下していきます。このため、高齢者では(EF)が正常な拡張障害型心不全の割合が増加してきます。また、高齢者の場合、心室充満・心拍出の5~40%を心房収縮に依存しているため、発作性心房細動(pAF)をきたして心房収縮が障害されただけでも急性心不全を起こすことがあります。

*高齢者では、EFが正常な心不全がある
*高齢者は、発作性心房細動だけでも心不全の危険あり



吐血といっても頻脈じゃないので、それほど大した出血量ではないのでは?

安静時(ストレスがかかってない状態)における心拍数は加齢で変化しませんが、運動やストレス負荷に伴う心拍数の反応は加齢とともに低下します。
これは、ストレス負荷がかかった時に分泌されるカテコラミンに対して感受性が低下してくることが原因と考えられます。つまり、生体に緊急事態が発生して内因性のカテコラミン分泌が亢進しても高齢者では頻脈にならないことがあるのです。
若年者では外傷や消化管出血で出血性ショックをきたす場合は血圧が下がる前に頻脈になるため、頻脈は出血性ショックの早期診断の手がかりとして有用です。高齢者では大出血をきたしても頻脈にならないため、「頻脈じゃないから大した出血量じゃないでしょう」と誤解しないように注意が必要です。特に普段から高血圧症・狭心症・心房細動などの治療で心拍数上昇を抑制する薬剤(B受容体遮断薬、ジルチアゼムやベラパミルなどのカルシウム拮坑薬、ジギタリス等)を内服している高齢者は要注意です。

*高齢者は、出血をきたしても頻脈にはならない

今は技術も進歩しているのだから、高齢者でもカテーテル検査を積極的に行うべきでは?

加齢とともに血管壁にエラスチン量減少、コラーゲン線維の増加、石灰化など動脈硬化変化がおこります。動脈硬化部分にひび割れをきたす(じゅくしゅ破綻)と、そこの血栓(血の塊)が付着して血管が閉塞してしまいます。高齢者になると、急性心筋梗塞、脳梗塞、腎梗塞、上腸間膜動脈閉塞など血管が詰まる病気が多くなるのは、動脈硬化の影響があるためです。
最近は技術が発達し、高齢者でもカテーテル検査が積極的に行われるようになりました。しかし不用意なカテーテル操作を行うと、動脈硬化をきたした血管壁を傷つけてコレステロールの結晶を全身にまき散らしてしまうことがあります。これをコレステロール塞栓症といい、多臓器不全をきたす恐ろしい合併症です(足の血管にコレステロール塞栓が詰まると足が「青い靴」をはいたように真っ青になるので、海外では【青い靴症候群と呼ばれています)。

*高齢者の血管は硬くて詰まりやすい!常に血管疾患(心筋梗塞、上腸間膜動脈閉塞、腎梗塞、脳梗塞など)を考慮する
*高齢者におけるカテーテル検査では、コレステロール塞栓症を警戒しましょう。

→ 老化による身体への症状と影響(原因)1

引用文献
参考文献
著書 JJNスペシャル NO.88 医学書院 岩田充永
急変予防&対応ガイドマップ 高齢者救急

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